第31話「弁当」
「リツコ、いる?」
研究室のドアが開かれる。
ノックくらいして欲しいわね、と電磁波遮断眼鏡の奥からきらりと睨む。
が、葛城ミサトはこたえた様子はない。
「あのさぁ、あたし、今日、帰らせてもらうわ。悪いけど、あと頼める?」
とうに勤務時間は過ぎている。
わざわざ断る必要はないのだが、司令と副司令の不在を埋めるため仕事が山積みになっている上に戦略自衛隊ロボット兵器の後始末である。とても手に負えず、赤木リツコに頼ってMAGIによるサポートシステムを流用させてもらっている身。
勝手に帰るのは無責任だと妙に律儀に考えたらしい。
「どうしたの? なにかあった?」
コンソールから手を離して、友人の苦い表情に気づく。
「んー、アスカがねえ」
ぼりぼりと頭をかく。
「うち、出て来ちゃってさ。本部に宿舎を用意しろって騒いでねぇ」
「アスカが? シンジくんとケンカでもしたのかしら?」
「よくわかんないんだけどさ。アスカもなーんも言ってくれないしね」
「それで?」
「うん、シンジくんに訊いてみようと思って」
「調子に乗って3人とも預かるからよ」
「自業自得って? そうはいってもねえ」
突っかかってこないところをみると、相当疲れているのだろう。
「わかったわ。あとやっといてあげるから、お帰りなさい」
「悪いわね」
両の掌を顔の前で合わせる。
「明後日には司令もお帰りになるから、楽になるわよ」
「うーん」
こきこきと首をふった。
「あの二人の偉大さが身に染みたわ。副司令なんて相当の歳なのに、よくあれだけ元気よねえ」
「あら、碇司令はまだお若いわよ」
「若いったってもうすぐ五十でしょ? あ、リツコ、いい精力剤でも持ってる? あるならあたしにも分けてよ。じゃあ」
はぁと溜息をつき、ぶつくさと言いながら部屋を出ていった葛城ミサトは、自分の言葉に少し顔を赤らめている赤木リツコを見るチャンスを逃した。
「なんや、今日は惣流は休みかいな?」
通学路。
いつものように朝、碇シンジを誘いに来た鈴原トウジと相田ケンスケだが。
碇シンジと綾波レイの二人だけしか出てこなかったことに不審の目を向けた。
「アスカ、帰ってないんだよ」
「なに? 夜遊びか?」
鼻の穴を広げる。
「違うよ。ネルフ本部の宿舎で住むって、出てっちゃったんだ」
「碇〜」
ガキ、とヘッドロックをかける。
「さてはお前、惣流になんかしたんとちゃうか?」
「もし本当なら許せないぜ、それは」
「ちがうって」
「正直に言うてみい!」
「惣流の味はどうだったんだ? くぅ、やっぱり隠しカメラを仕掛けておくんだった」
「なにむちゃくちゃ言ってるんだよ」
「なあ、綾波。ほんまのとこ、どうなんや?」
「……知らない」
「やっぱり、三角関係のもつれかいな」
「惣流ってシンジのこと、好きだったんだよな、うん」
「まさか」
ようやく鈴原トウジの腕をふりほどいて碇シンジ。
「嫌われちゃったんだ」
「そやからなにをしたんや?」
「……なんにもしなかったからかな」
なにを惚気てんねん! と突っ込もうとして。
少年の表情の翳りにようやく気づいた。
「複雑な話みたいだな?」
「まあ、あんまり考えるなや。女っちゅうもんは謎やさいかな」
人前で悩むそぶりを見せることの少ない碇シンジである。その彼の常にない態度に、慌てて言葉を繕ったが、事情も知らない中学生では限界もあろうというものだ。
一転、言葉少なに学校への道を急ぐ4人だった。
その話題の惣流アスカは。
すでに昼前。4時限目の授業途中になってようやく教室に姿を見せた。
自慢の赤毛もどこか力無い。
「アスカ?」
心配げに見つめる洞木ヒカリであるが、委員長という手前、授業中にチャットをしかけるのもはばかられる。
やきもきしながら授業の終わりを待つしかない。
端末は広げたものの頬杖をついてぼんやり外を眺める惣流アスカを、ちらちらとうかがうのが精一杯だった。
「起立! 礼!」
号令をかけ終わると同時に、彼女の席に駆け寄る。
「アスカ、どうしたの?」
鈴原トウジたちから話はちらと聞いている。
「葛城さんの家、出たって聞いたけど」
「うん、まあね」
はぁ、と溜息をつく。
「碇くんとケンカでもしたの?」
「ケンカ、ってわけじゃないんだけど」
「あたしで良かったら、相談に乗るけど……」
「ありがと」
「あの、アスカ?」
躊躇いがちに声がかけられる。
碇シンジが立っていた。
「これ。お弁当」
きょとんと惣流アスカは少年の顔を見つめた。
家を出た自分の分までわざわざ作っているとは思わなかったのだろう。
しばらく、差し出された弁当箱と碇シンジの顔を交互に眺めていたが。
「悪いわね!」
ひったくるようにして弁当箱を奪い取った。
「ヒカリ! 屋上行って食べよ!」
「う、うん」
洞木ヒカリは遠慮がちに少年の顔を見やってから、軽く頷くように頭を下げると、教室を飛び出した惣流アスカの後を追った。
「なんや、いけすかん女やの」
「いいんだ」
友人のために毒づく鈴原トウジを振り返った時、碇シンジは笑顔になっていた。
席に戻り、自分の弁当箱を取り出す。
「碇くん……」
「食べようか」
受け取ってもらえたなら、それでいいや、と。
そう思っているのだろうと綾波レイは考えた。
「……おいしい」
自分の分の碇シンジ手製弁当を箸でついばみ、ことさらに口にしたのは、惣流アスカの代わりのつもり。
「そっかな?」
「お、餃子か? センセもレパートリー増えてきたの。ええ婿さんになれるで」
机を近づけて来て焼きそばパンを頬張る鈴原トウジが覗き込んだ。
「……これはワンタン」
「へえ」
「綾波のは肉抜きだけどね」
「肉抜きワンタン?」
それはワンタンと違ごて、ワンタンの皮、っちゅうんちゃうんか?
鈴原トウジにはエヴァパイロットの気持ちは理解できなかった。
屋上で洞木ヒカリと並び箸を動かす惣流アスカの弁当に詰められているのは、ちゃんと肉入りである。
「それでアスカ、今どこに住んでるの?」
「ネルフ本部よ」
あぐあぐと口を動かしながら惣流アスカ。
「昨日の夕方、突然出ていったもんだからさ。宿舎開けてもらえたのが遅くなっちゃって」
「それで寝過ごしただけ?」
「そりゃあ」
箸を止める。
「眠れなかったってのもあったわよ」
いつもなら碇シンジが起こしに来るのだが、ネルフ本部宿舎には当然、そんなサービスはない。
ようやく起き出した後もぼんやりとケージで弐号機の姿を眺めていた。
結局、学校に来る気になったのはすでに昼前だった。
「やっぱり碇くんのこと?」
「うーん、ってわけでもなくて」
再び弁当に戻る。えらく凝ったウインナーをぷすりと箸で刺す。
「あたし、なんでエヴァに乗ってるんだろうなって」
「エヴァに?」
「あいつがさ、わかったようなこと言うのよ。ばかシンジのくせに」
……アスカはなんでエヴァに乗ってるの?
……勝つとか負けるとかって関係ないと思うよ?
……エヴァに乗ってなくてもアスカじゃなくなることないのにさ?
消化できない思いが胸を駆け巡っていた。
「エヴァってね、ただのロボットじゃないの」
「え、そ、そうなの?」
洞木ヒカリには土台、理解できない。
惣流アスカも理解させようと話しているのでは無かろうと、適当に相づちを打つ。
「ママがいるのよ」
「お母さん?」
「そ。だからあたしは一人じゃない。ママが護ってくれるから。あたしを見てくれるから。だから、誰にも負けないし、負けられないんだ、ってね」
「う、うん」
「ばかシンジなんて弱っちいやつは、あたしが助けてあげなきゃ、って思ってた」
「碇くん? 碇くんが弱っちいの?」
「そうよ!」
またガツガツと弁当を口に運ぶ。
「やさしそうだけど……弱そうには見えないけどな」
「……かもね」
「え?」
「だから、わかんなくなっちゃったのよ。シンジのことも。自分のこともね」
……そしてエヴァのことも。
すでに弁当箱は空。
それでも箸を離さず、なくなったおかずを掴むように動かす。
「あいつのこと、好き、とかってんじゃなかったからね」
「そうなの? あたしはてっきり……」
「違うわよ」
手をひらひらと振った。
「あたしのこと、見て欲しかっただけなのよね。他の誰よりも。あたしの気持ちが分かりそうな奴ってあいつくらいのもんだろうし。だから他人に取られるなんていやだし……」
「ね、アスカ。それ、好きっていうんじゃないの?」
洞木ヒカリにしてみれば至極もっともな疑問であったが。
「へっ? 違うわよ。ぜんぜん」
惣流アスカの感覚は異なっているらしかった。
「ともかくね」
ようやく箸をおいて惣流アスカは続けた。
「もやもやとすんのよ。あいつの顔、見てるとますます」
だから家を出たんだ、と結論した。
「ひとりで考えなきゃならないことがあるようで、ね」
「ふうん」
主婦のように家事を切り盛りする洞木ヒカリであったが、中学生の日常を越えたこの激しい少女の悩みはどこか遠く感じられた。
「碇くんもアスカも、大人なのね」
「大人?」
だが、その言葉は今はずいぶん間違えたものであったかも知れなかった。
研究室のドアが開かれる。
ノックくらいして欲しいわね、と電磁波遮断眼鏡の奥からきらりと睨む。
が、葛城ミサトはこたえた様子はない。
「あのさぁ、あたし、今日、帰らせてもらうわ。悪いけど、あと頼める?」
とうに勤務時間は過ぎている。
わざわざ断る必要はないのだが、司令と副司令の不在を埋めるため仕事が山積みになっている上に戦略自衛隊ロボット兵器の後始末である。とても手に負えず、赤木リツコに頼ってMAGIによるサポートシステムを流用させてもらっている身。
勝手に帰るのは無責任だと妙に律儀に考えたらしい。
「どうしたの? なにかあった?」
コンソールから手を離して、友人の苦い表情に気づく。
「んー、アスカがねえ」
ぼりぼりと頭をかく。
「うち、出て来ちゃってさ。本部に宿舎を用意しろって騒いでねぇ」
「アスカが? シンジくんとケンカでもしたのかしら?」
「よくわかんないんだけどさ。アスカもなーんも言ってくれないしね」
「それで?」
「うん、シンジくんに訊いてみようと思って」
「調子に乗って3人とも預かるからよ」
「自業自得って? そうはいってもねえ」
突っかかってこないところをみると、相当疲れているのだろう。
「わかったわ。あとやっといてあげるから、お帰りなさい」
「悪いわね」
両の掌を顔の前で合わせる。
「明後日には司令もお帰りになるから、楽になるわよ」
「うーん」
こきこきと首をふった。
「あの二人の偉大さが身に染みたわ。副司令なんて相当の歳なのに、よくあれだけ元気よねえ」
「あら、碇司令はまだお若いわよ」
「若いったってもうすぐ五十でしょ? あ、リツコ、いい精力剤でも持ってる? あるならあたしにも分けてよ。じゃあ」
はぁと溜息をつき、ぶつくさと言いながら部屋を出ていった葛城ミサトは、自分の言葉に少し顔を赤らめている赤木リツコを見るチャンスを逃した。
「なんや、今日は惣流は休みかいな?」
通学路。
いつものように朝、碇シンジを誘いに来た鈴原トウジと相田ケンスケだが。
碇シンジと綾波レイの二人だけしか出てこなかったことに不審の目を向けた。
「アスカ、帰ってないんだよ」
「なに? 夜遊びか?」
鼻の穴を広げる。
「違うよ。ネルフ本部の宿舎で住むって、出てっちゃったんだ」
「碇〜」
ガキ、とヘッドロックをかける。
「さてはお前、惣流になんかしたんとちゃうか?」
「もし本当なら許せないぜ、それは」
「ちがうって」
「正直に言うてみい!」
「惣流の味はどうだったんだ? くぅ、やっぱり隠しカメラを仕掛けておくんだった」
「なにむちゃくちゃ言ってるんだよ」
「なあ、綾波。ほんまのとこ、どうなんや?」
「……知らない」
「やっぱり、三角関係のもつれかいな」
「惣流ってシンジのこと、好きだったんだよな、うん」
「まさか」
ようやく鈴原トウジの腕をふりほどいて碇シンジ。
「嫌われちゃったんだ」
「そやからなにをしたんや?」
「……なんにもしなかったからかな」
なにを惚気てんねん! と突っ込もうとして。
少年の表情の翳りにようやく気づいた。
「複雑な話みたいだな?」
「まあ、あんまり考えるなや。女っちゅうもんは謎やさいかな」
人前で悩むそぶりを見せることの少ない碇シンジである。その彼の常にない態度に、慌てて言葉を繕ったが、事情も知らない中学生では限界もあろうというものだ。
一転、言葉少なに学校への道を急ぐ4人だった。
その話題の惣流アスカは。
すでに昼前。4時限目の授業途中になってようやく教室に姿を見せた。
自慢の赤毛もどこか力無い。
「アスカ?」
心配げに見つめる洞木ヒカリであるが、委員長という手前、授業中にチャットをしかけるのもはばかられる。
やきもきしながら授業の終わりを待つしかない。
端末は広げたものの頬杖をついてぼんやり外を眺める惣流アスカを、ちらちらとうかがうのが精一杯だった。
「起立! 礼!」
号令をかけ終わると同時に、彼女の席に駆け寄る。
「アスカ、どうしたの?」
鈴原トウジたちから話はちらと聞いている。
「葛城さんの家、出たって聞いたけど」
「うん、まあね」
はぁ、と溜息をつく。
「碇くんとケンカでもしたの?」
「ケンカ、ってわけじゃないんだけど」
「あたしで良かったら、相談に乗るけど……」
「ありがと」
「あの、アスカ?」
躊躇いがちに声がかけられる。
碇シンジが立っていた。
「これ。お弁当」
きょとんと惣流アスカは少年の顔を見つめた。
家を出た自分の分までわざわざ作っているとは思わなかったのだろう。
しばらく、差し出された弁当箱と碇シンジの顔を交互に眺めていたが。
「悪いわね!」
ひったくるようにして弁当箱を奪い取った。
「ヒカリ! 屋上行って食べよ!」
「う、うん」
洞木ヒカリは遠慮がちに少年の顔を見やってから、軽く頷くように頭を下げると、教室を飛び出した惣流アスカの後を追った。
「なんや、いけすかん女やの」
「いいんだ」
友人のために毒づく鈴原トウジを振り返った時、碇シンジは笑顔になっていた。
席に戻り、自分の弁当箱を取り出す。
「碇くん……」
「食べようか」
受け取ってもらえたなら、それでいいや、と。
そう思っているのだろうと綾波レイは考えた。
「……おいしい」
自分の分の碇シンジ手製弁当を箸でついばみ、ことさらに口にしたのは、惣流アスカの代わりのつもり。
「そっかな?」
「お、餃子か? センセもレパートリー増えてきたの。ええ婿さんになれるで」
机を近づけて来て焼きそばパンを頬張る鈴原トウジが覗き込んだ。
「……これはワンタン」
「へえ」
「綾波のは肉抜きだけどね」
「肉抜きワンタン?」
それはワンタンと違ごて、ワンタンの皮、っちゅうんちゃうんか?
鈴原トウジにはエヴァパイロットの気持ちは理解できなかった。
屋上で洞木ヒカリと並び箸を動かす惣流アスカの弁当に詰められているのは、ちゃんと肉入りである。
「それでアスカ、今どこに住んでるの?」
「ネルフ本部よ」
あぐあぐと口を動かしながら惣流アスカ。
「昨日の夕方、突然出ていったもんだからさ。宿舎開けてもらえたのが遅くなっちゃって」
「それで寝過ごしただけ?」
「そりゃあ」
箸を止める。
「眠れなかったってのもあったわよ」
いつもなら碇シンジが起こしに来るのだが、ネルフ本部宿舎には当然、そんなサービスはない。
ようやく起き出した後もぼんやりとケージで弐号機の姿を眺めていた。
結局、学校に来る気になったのはすでに昼前だった。
「やっぱり碇くんのこと?」
「うーん、ってわけでもなくて」
再び弁当に戻る。えらく凝ったウインナーをぷすりと箸で刺す。
「あたし、なんでエヴァに乗ってるんだろうなって」
「エヴァに?」
「あいつがさ、わかったようなこと言うのよ。ばかシンジのくせに」
……アスカはなんでエヴァに乗ってるの?
……勝つとか負けるとかって関係ないと思うよ?
……エヴァに乗ってなくてもアスカじゃなくなることないのにさ?
消化できない思いが胸を駆け巡っていた。
「エヴァってね、ただのロボットじゃないの」
「え、そ、そうなの?」
洞木ヒカリには土台、理解できない。
惣流アスカも理解させようと話しているのでは無かろうと、適当に相づちを打つ。
「ママがいるのよ」
「お母さん?」
「そ。だからあたしは一人じゃない。ママが護ってくれるから。あたしを見てくれるから。だから、誰にも負けないし、負けられないんだ、ってね」
「う、うん」
「ばかシンジなんて弱っちいやつは、あたしが助けてあげなきゃ、って思ってた」
「碇くん? 碇くんが弱っちいの?」
「そうよ!」
またガツガツと弁当を口に運ぶ。
「やさしそうだけど……弱そうには見えないけどな」
「……かもね」
「え?」
「だから、わかんなくなっちゃったのよ。シンジのことも。自分のこともね」
……そしてエヴァのことも。
すでに弁当箱は空。
それでも箸を離さず、なくなったおかずを掴むように動かす。
「あいつのこと、好き、とかってんじゃなかったからね」
「そうなの? あたしはてっきり……」
「違うわよ」
手をひらひらと振った。
「あたしのこと、見て欲しかっただけなのよね。他の誰よりも。あたしの気持ちが分かりそうな奴ってあいつくらいのもんだろうし。だから他人に取られるなんていやだし……」
「ね、アスカ。それ、好きっていうんじゃないの?」
洞木ヒカリにしてみれば至極もっともな疑問であったが。
「へっ? 違うわよ。ぜんぜん」
惣流アスカの感覚は異なっているらしかった。
「ともかくね」
ようやく箸をおいて惣流アスカは続けた。
「もやもやとすんのよ。あいつの顔、見てるとますます」
だから家を出たんだ、と結論した。
「ひとりで考えなきゃならないことがあるようで、ね」
「ふうん」
主婦のように家事を切り盛りする洞木ヒカリであったが、中学生の日常を越えたこの激しい少女の悩みはどこか遠く感じられた。
「碇くんもアスカも、大人なのね」
「大人?」
だが、その言葉は今はずいぶん間違えたものであったかも知れなかった。